「港町の トラディション 」

 初春を迎え、寒さが深まるころですが、コートの衿元から春が薫るシルクのスカーフをご紹介します。

 東京のお隣、神奈川の「横浜スカーフ」をご存知でしょうか。開港以来つづく、港町の文化から花開いた産業です。最盛期は、プリントをする捺染工場が130社も軒を連ねていました。今では15社ほどになりましたが、その繊細な表現は健在です。

 そんな横浜のうつりかわりを、長く見つめてきたのは、有限会社三貴の三浦さんです。職人と私たちをつなぐ、橋渡し役を担っています。三浦さんの案内で、横浜市旭区の工場を訪ねました。

 住宅街をぬけてすぐ、湯気がもくもくと立ちのぼっていたのは、創業59年になる株式会社丸鈴産業です。社長の鈴木さんと作業場へ向かうと、大きなプリント版と、スケージというゴムべらが、ずらりと並んでいました。

まずは、色つくりから始まります。素材ごとに染料を使い分け、気温や湿度にあわせ、配合を決めていきます。何度も色を確認しながら進めていたのが印象的でした。
次は、摺る工程です。プールほどの長い斜めの台に、シルク生地を張ります。そして、染料を一色ずつ均一に、スケージで摺り下ろします。緻密に柄を合わせながらの作業は、ぴんとはりつめた空気が伝わってきます。
それから、色を定着させる蒸しへ続きます。湯気は、ここからきていました。蒸しの前と後では、色が変わることに驚きました。

 ひとくちにプリント工場と言っても、版、色、摺り、蒸しと職人技がつながっていることを、目の当たりにしました。

 パラスパレスの「横浜スカーフ」は、春格子柄に遠近ドット柄、辛夷柄です。シルクに咲いた表情を、ぜひご覧ください。モノトーンの一輪草柄、春色を合わせたブロック柄は、綿素材でご用意しました。どれも、春気分になれる自信作です。

 鈴木さんは、時代の流れか、求められることが多様化してきたことを教えてくれました。だからいろいろできるようになっちゃったよ、と明るく語るおふたりと、一緒に働く若き三代目の姿に、横浜の底力を感じました。
 この技術を、地元でも知らない人が多いのは、寂しいことです。だからこそお客様には、ほかにはないデザインで、もっと楽しい提案をしたいね、とはにかんだような笑顔の三浦さん。元デザイナーの言葉に、私たちは身の引き締まる思いでした。
 
今季のテーマ遠近は、春の山の風情をあらわす言葉のほか、今と昔の意味もあります。前向きなものづくりこそが、伝統であることを一枚のスカーフから感じていただければと思います。
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