「 糸を たのしむ つながる 」 

パラスパレスは、日本各地の技をのせて服を仕立てています。今回は、生地の素となる糸のお話しです。

 冬のテーマ「紡」は、糸からよそおう楽しみを伝えたいと考えました。
毛糸には、二種類あるのをご存知でしょうか。梳毛という細くて光沢のあるものと、紡毛という太くてやわらかなものです。パラスパレスでは紡毛を多くつかっています。
 紡毛の楽しいところは、いろいろな原料がブレンドでき、個性的な表情をつくれることです。今季は、カシミヤとウールでジャズネップという糸をつくりました。ジャズのような自由な表現が名前の由来だそうです。

 この糸をつくっていただいたのは、愛知県岡崎市にある三河紡毛株式会社の濱谷さんです。毛の持ち味を知り尽くし、こだわった原料を操る、糸のデザイナーともいうべき存在です。そして、素材の魅力を最大限に引きだすのは、ミュール精紡機という旧式の機械です。調整を重ねながら、時間をかけゆっくりと、ここでしか紡げない糸を生みだします。
 工場を訪ねて驚いたのが、塵ひとつおちていないことでした。床や壁、手入れが行き届いた機械には、時を経た美しさがありました。濱谷さんの真摯な姿勢が、表れています。

 ジャズネップ糸は、カジュアルな見た目からは想像がつかない、やわらかさが特長です。極めて細いカシミヤを、正反対に太く紡ぐことは、とても難しい過程でした。丹念にブレンドを何度も繰り返すことで、ようやくそれぞれの個性がひとつの糸にまとめ上がりました。
こうしてできた糸は、どこにもない、パラスパレスの顔を持っていました。手にしたときの嬉しさは言葉になりません。

そこから、服のシルエットを想像して杉綾地に織り、コートを仕立てました。この糸の魅力をまっすぐに届けたい思いから、二種類の編地でニットもつくりました。ぜひ目と手で、楽しさを感じてください。

服のファスト化が定着した今、丁寧に糸を紡ぐミュール精紡機をつかうことは、簡単なことではありません。毎回、濱谷さんは納期の調整に悩まされています。産地では稀少な技術と職人が減り続け、いつまで維持できるのか先の読めない不安もあるといいます。   
そのなかで、わたしたちには服を通して、産地の作り手と着る人を、つなげていきたい思いがあります。糸を紡ぐように、そんなものつくりでありたいと望んでいます。
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