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釦は、ときめき。
日差しがきりりと肌を差すのに、
なんだか胸は浮かれて、
すっかりどこかへと足を伸ばしてしまいたくなる。
そんな夏が、今年もやって来ます。
通り過ぎれば、いつも恋焦がれてしまう季節だからこそ、
どうか大切に過ごせますように。
ポッと浮かれて踊る胸には、
触れればひんやりとほのかに冷たい、
さりげないきらめきの、貝釦(かいぼたん)が、 とってもよく似合います。
貝殻から生まれた天然の「貝釦」と、
パッと陽を跳ね返しながらも、どこかあたたかみが残る、
そんなパラスパレスの、こだわりの「白」。
ふたつの涼やかな組み合わせが、この夏いちばんの自慢です。
長く変わらず貝釦の制作をお願いしているのは、『菊ち服飾』さん。
福島県の山奥に自社工場も構える、老舗の服飾資材屋さんです。
その素材の素晴らしさ、見事な技術はもちろんのこと、
刻印や金彩、オリジナルの型作りや穴あけの位置まで、
じっくり相談しながらものづくりを一緒にすすめることができる、
たしかな信頼がそこにあります。
貝釦でよく使われているのは、
高瀬貝に、黒蝶貝、白蝶貝、茶蝶貝、そしてアワビ。
高瀬貝に、黒蝶貝、白蝶貝、茶蝶貝、そしてアワビ。
南の島で立派に育った大きなそれらを輸入して、自社工場ですべて形成を行われています。
自然のものですから、
形状、色味、パールの輝き、触れた感触...
形状、色味、パールの輝き、触れた感触...
どれをとっても、ひとつとして同じものはありません。
釦は、ときめき。
その色味や、かすかな凹凸の妙が、
その色味や、かすかな凹凸の妙が、
ひとつひとつの、うっとりするような表情を作り出しているのです。
手のひらで、コロコロと弾むような小さな釦ですが、
取れたままの大きくゴツゴツとした貝殻を目の前にすると、
完成までの工程に、どれだけの技術と時間が込められているのかが、
とてもよく伝わってきます。
まずは、手のひらよりも大きいほどの貝殻から、
神経を集中させ丁寧に形を抜くのだといいます。
そこから、全体の厚さを整えて均す作業。
そして、最終的なサイズ・デザインに削り取ったあとは、
4ツ穴や2ツ穴などの糸を通す穴をあけ、
ドイツ製の油とモミを使った薬品で表面を軽く溶かしながら「艶出し」を行います。
最後に細かなキズも見逃さぬよう検品し、
選ばれた美しいものだけが、洋服の上できらり輝くこと許されるのだそう。
どの貝にもそれぞれに特徴があり、
その扱いには、集中と鍛錬、そして繊細な心が求められます。
そんな貝釦としっくりと馴染むのは、
漂白剤で染め切ったような、パキッと眩しい白よりも、
ふんわりと仕上げる、やわらかな表情の「白」。
これは、パラスパレスのこだわりでもあります。
ひんやりと冷たい印象よりも、
涼やかな風や心地を感じる、そんな魅力を大切にしているからです。
そして、選び抜かれた表情豊かな貝釦が、
そこに、しっくり、しっかりとマッチして、
洋服全体の印象を、より味わい深いものへと導いてくれるのです。
実は、その味わいを追い求め、
時には、あえて美しく艶出しされた釦の、「艶消し」をお願いすることもあります。
しかし、菊ち服飾さんはその意図もしっかりと汲んでくれています。
生地と釦の組み合わせは、とても繊細なバランスが求められるもの。
よりナチュラルな素材の生地を選ぶときには、
きらきらと輝きすぎない、艶消しを施した貝釦を。
さらにガーゼのような、よりやわらかな素材を選ぶときには、
アクセントとなるような、上品で美しい貝釦を...。
それぞれに相応しいものを、何度も何度も素材に充がいながら、
どれか、どれか、と絶妙な相性に出会うまで、釦選びは続くのです。
しかしついに、「おお、これだ...」とその組み合わせと出会えたとき、
洋服はパッと目覚めたように見違え、
身につけている人の様子が、まぶたの裏でありありと浮かんできます。
今年も、そんな繊細な心と作り方で、いくつもの夏服を用意しました。
夏は涼やかに、そしてちょっと大胆に。
鏡の前で、撫でるように貝釦を胸元まで留め上げたなら、
ちょっと大股で、弾むように、風のように、出かけてみてください。
白のシャツが、夏の思い出を、
さらりと演出してくれる相棒になってくれることを、願っています。
(文:中前結花)
PFOP1534B インディゴガーゼリネンワンピース \28,200